生成AI・AIエージェントを活用したAI駆動開発セミナーで使用した開発環境について

AI駆動開発環境の激動の3か月 ─ セミナーで採用した開発環境の変遷

はじめに

2025年3月から6月、生成AI・AIエージェントを活用したAI駆動開発セミナー中、予想外の環境変化に直面しました。わずか3か月で開発ツール市場が激変し、当初計画の大幅な見直しを余儀なくされた経緯をご紹介します。

当初の計画(2025年3月末)

想定ツール: CursorとWindsurf

AIエージェント搭載で高評価を得ていたCursorとWindsurfを選定。両ツールはVS Codeベースで、お客様の開発環境との親和性が高く、C言語も使用可能でした。データベース接続にMCP設定が必要な点は考慮しつつも、AIエージェント方式によるAI駆動開発への適性を重視しました。

なお、当時VSCode + GitHub Copilotのエージェント機能は未知数であり、実績のあるCursorとWindsurfが有力候補でした。

4月の衝撃:Microsoftによる制限強化

2025年4月3日、事態が急変

MicrosoftがC/C++拡張機能(v1.24.5)のライセンス制限を技術的に強制開始。CursorやWindsurfなどVSCodeフォークでC言語が使用不可に。

エラーメッセージ:

"The C/C++ extension may be used only with Microsoft Visual Studio, Visual Studio Code, Azure DevOps..."

致命的な問題:

  • C/C++のIntelliSenseとデバッグ機能が使用不可
  • 実証実験では問題はないが、将来的にC言語の取り扱いが未知数
  • 代替拡張機能は品質面で劣る
  • お客様の開発環境との互換性喪失

VSCode + GitHub Copilotで開始(5月中旬〜6月末)

ライセンスリスク回避のため方針転換

5月中旬からVSCode + GitHub CopilotでAI駆動開発を開始:

  • 公式VSCodeならC/C++拡張機能を完全サポート
  • Microsoft製品のため将来的な制限リスクなし
  • エンタープライズ対応で安定性も担保

6月末に開発完了、しかし課題が判明:

  • GitHub Copilotの性能が安定しない
  • 複雑なタスクでの精度に課題
  • 生成AI・AIエージェントによるAI駆動開発特有の問題点が明確に
  • より高性能なソリューションが必要に

5月の転機:Claude 4登場(5月22日)

業界を揺るがすリリース

AI駆動開発中の5月22日、Anthropic社がClaude 4シリーズとClaude Codeを正式リリース:

Claude Opus 4:

  • 「世界最高のコーディングモデル」
  • SWE-benchで72.5%のトップスコア
  • 数時間の連続タスク実行が可能

Claude Sonnet 4:

  • エージェント型開発に最適
  • 複雑なコードベース理解に優れる

Claude Code:

  • ターミナルベースのAIコーディングツール
  • 6月5日よりProプラン(月額20ドル)で利用可能に

VSCode + Claude Codeへ移行(7月〜)

採用構成: VSCode + Claude Code

AI駆動開発で判明した問題点を改善する開発において、VSCode + Claude Codeへ本格移行。

選定理由

  1. VSCode主体の環境維持

    • お客様が使い慣れた開発環境を継続
    • 豊富な拡張機能とデータベース連携の自由度
    • セミナーの実証実験ではC言語を使用しないため、VSCodeの汎用性を重視
  2. Claude Code採用の決め手

    • AI駆動開発で明らかになったGitHub Copilotの性能・安定性課題を解決
    • 世界最高水準のコーディング能力(SWE-bench 72.5%)
    • 複数ファイル横断の大規模リファクタリング
    • ハルシネーション抑制と高精度
    • 数時間の連続タスク実行が可能
    • AI駆動開発特有の問題点への対応力
  3. ライセンス安全性

    • 公式VSCodeでC/C++完全サポート(将来の備え)
    • プラットフォームに依存しないターミナルベース

業界評価

  • Cursor: "複雑なコードベース理解で大きな飛躍"
  • GitHub: "Copilotの新エージェントに採用予定"
  • Replit: "複数ファイル変更で劇的進歩"

学んだ教訓

1. プラットフォームリスク

VSCodeフォークはMicrosoftの拡張機能制限に脆弱。ライセンス問題が突然発生するリスクを実感。

2. 実開発での検証の重要性

開発を通じて、AI駆動開発特有の問題点と各ツールの実力が明確に。机上の評価だけでは見えない課題が判明。

3. 市場の急速な変化

4か月で業界地図が激変:

  • 4月:Microsoft制限強化 → フォーク製品に打撃
  • 5月中旬〜6月:VSCode + GitHub CopilotでAI駆動開発
  • 5月22日:Claude 4登場 → 業界標準が刷新
  • 6月末:AI駆動開発完了、AI駆動開発の問題点が判明
  • 7月〜:問題点改善の次開発でClaude Codeへ移行

4. 性能と安定性の重要性

AI駆動開発での経験から、AI開発ツールは「使える」だけでなく「実務で安定して高性能」であることが不可欠と判明。

5. 使い慣れた環境の重要性

セミナー参加者の学習効率を考慮し、広く普及しているVSCodeを基盤に維持。拡張機能の豊富さとデータベース連携の柔軟性も継続的な価値。

6. コスト革命

世界最高水準のAIが月額20ドルから利用可能(実務では200ドルプランに加入)に。AI駆動開発の民主化を実現。

まとめ

AI駆動開発環境の選定には、技術評価だけでなくプラットフォームリスクライセンス動向急速な技術革新実開発での検証、そしてユーザーの使い慣れた環境への配慮が不可欠です。

当初、AIエージェント機能を重視してCursorとWindsurfを選定したものの、4月のMicrosoftライセンス制限によりC言語が使用不可に。5月中旬からVSCode + GitHub CopilotでAI駆動開発を実施し、6月末に完了した時点でAI駆動開発の問題点が明確になりました。その改善を図る開発では、より高性能なVSCode + Claude Codeへ移行しました。

セミナーの実証実験ではC言語を使用しないものの、お客様の開発環境との整合性と、VSCodeの汎用性・拡張性を重視。特に2025年5月のClaude 4リリースは、AI駆動開発に新たな基準を打ち立て、実務で使える真の高性能AIツールの登場となりました。

重要なのは、常に最新動向をキャッチアップしながら、実開発での検証を通じて、お客様にとって使いやすく、安定性が高く、持続可能で、最高のパフォーマンスを発揮できるソリューションを提供することです。


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Mark4
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