健康診断でAIは使われているのか — 受診して先生に聞いてみた

はじめに

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先日(3月26日)、定期健康診断を受診してきました。本日(4月3日)にその結果が届いたのですが、診断結果を眺めながらふと疑問が浮かびました。各項目の値の関連性はないのか? 現状の食生活との関わりの影響はないのか?

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そこで、Google Geminiの「Deep Research」機能を使って、健診結果の多段階調査を試みました。すると、「これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。」という注記付きで、健診データをもとにした詳細な報告書が作成されました。現状の食生活や生活パターンを考慮した上で、各項目の相互関連や改善の方向性が整理された内容です。

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AIが健診結果を分析して、ここまでの報告書を出せる時代になっている。では、そもそも健康診断の現場では、AIはどの程度使われているのでしょうか。

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実は受診当日(3月26日)、担当の先生に直接聞いていました。

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先生の回答 — 「診察している場所による」

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健診を担当してくださった先生に率直に聞いてみました。

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「健康診断の画像診断にAIは使われていますか?」

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先生の回答は「診察している場所による」というものでした。大規模な病院や先進的な健診センターでは導入が進んでいるものの、すべての施設で使われているわけではない。最終的な診断は医師が行うものであり、AIはあくまで補助的なツールとして位置づけられているとのことでした。

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この回答は、AIの可能性を日々感じている当社の立場からすると少し物足りなく感じましたが、調べてみるとその背景には合理的な理由がありました。

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実態: 画像診断AIの導入率は27%

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日本人間ドック・予防医療学会の2024年の調査によると、画像診断AIを「既に導入済み」と回答した施設は約27%にとどまっています。つまり、4施設中3施設はまだAIを導入していないのが現状です。

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ただし、未導入の施設のうち35%が「導入を検討中」と回答しており、過渡期にあることは間違いありません。

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導入が進んでいる分野

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分野 活用内容 導入状況
胸部X線 微小な影の検出支援 一部の健診センターで導入
内視鏡検査 胃・大腸のリアルタイム画像解析 20万件超の動画で学習済みのAIが実用化
疾病リスク予測 健診データから6年先の疾病リスクを予測 東京ミッドタウンクリニック等で導入
大腸ポリープ検出 リアルタイムでポリープを検出・表示 2026年6月の診療報酬改定で評価対象に

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なぜ「それほど多くない」のか

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先生の回答の背景には、4つの構造的な理由があります。

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1. 薬事承認のハードル

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日本で医療AIを使うには、医療機器としての薬事承認(PMDA)が必要です。この審査に1年以上かかることがあり、さらに軽微なアップデートでも同期間の再承認が必要になる場合があります。

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AIの進化速度と、規制の承認速度のギャップが、導入の遅れにつながっています。

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2. 最終判断は医師の責任

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日本の医療制度では、診断の最終責任は医師が負います。AIはあくまで「診断支援ツール」であり、AIの判定結果だけで診断を下すことは法的に認められていません。

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この「人間が最終判断する」という原則は、AIの軍事利用における「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の議論とも通じるものがあります。

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3. 導入コスト

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AI画像診断システムの導入には、初期費用に加えて、医師・スタッフへのトレーニング、既存の医療情報システムとの連携など、継続的なコストが発生します。大規模な病院や健診センターでは投資対効果が見込めますが、中小規模のクリニックにとっては負担が大きいのが現実です。

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4. 「見えない」から気づかない

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これは意外な盲点でした。画像診断AIが導入されている施設であっても、受診者からは使われていることが見えない場合があります。AIは裏側で医師の読影を支援しているだけで、受診者に「AIで解析しました」と通知されることは通常ありません。

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つまり、実際には使われているのに、受診者が気づいていないケースもある可能性があります。

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生成AIの新しい活用 — 問診と文書作成

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従来型のAI(画像認識AI)とは別に、生成AI(大規模言語モデル)の医療への活用も始まっています。

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AI問診

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大阪国際がんセンターでは、患者がスマートフォンでAIアバターと対話しながら問診内容を入力できるシステムを実運用しています。待ち時間の有効活用と、問診の精度向上の両立を狙った取り組みです。

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医療文書の自動作成

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東北大学病院では、生成AIを活用して電子カルテの情報から医療文書を自動作成する実証実験を行い、作成時間を平均47%削減できたと報告しています。

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医師の「書く仕事」は膨大です。診断書、紹介状、退院サマリーなど、医療の質に直結する文書の作成に多大な時間を費やしています。ここにAIが入ることで、医師が「患者と向き合う時間」を増やせる可能性があります。

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疾病リスク予測

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東京ミッドタウンクリニックでは、1年分の健診データをもとに6年先の6疾病(糖尿病、肥満症、高血圧症、肝機能障害、腎機能障害、脂質異常症)のリスクを予測するAIサービスを導入しています。

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これは「治療」ではなく「予防」にAIを活用する試みであり、健康診断の価値そのものを変える可能性があります。

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富士フイルムの挑戦 — AI健診の世界展開

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注目すべき動きとして、富士フイルムホールディングスの「NURA(ニューラ)」があります。AI画像解析を武器にした健診センターをアジアに展開しており、2026年1月にタイのバンコク郊外に12番目の施設を開業しました。

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5年後には世界100拠点を目指すという計画です。日本の健診ノウハウとAI技術を「セットで輸出する」というビジネスモデルは、日本発のAI活用の成功事例になり得ます。

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当社の経験と重ねて

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当社はこれまでに、生成AIを法務文書の作成や、第1期決算の会計処理に活用した経験をブログで報告してきました。AIに「専門家の仕事」をさせてみると、予想以上の能力を発揮する一方で、最終判断は人間が責任を持つ必要がある、ということを実感してきました。

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医療におけるAI活用も、本質は同じです。AIは強力な支援ツールですが、「診断の責任」は医師にあります。当社のAI駆動開発においても、「コードの品質の責任」は開発者にあるのと同じ構造です。

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おわりに

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健康診断を受けて、先生にAIの活用状況を聞いてみるという、ちょっとした好奇心から始まった調査でしたが、医療分野におけるAI活用の「理想と現実のギャップ」を知る良い機会になりました。

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導入率27%という数字は、「まだ3/4が未導入」とも読めますし、「もう1/4が導入済み」とも読めます。2026年6月の診療報酬改定でAI活用が評価対象に加わることもあり、今後の加速が期待されます。

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来年の健康診断では、「AIが裏で読影を支援していた」と知らされることになるかもしれません。

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Mark4
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