激動の1年、そしてその先へ — 株式会社シーテン設立1周年に寄せて

起業から365日 — AIと共に歩んだ創業期の挑戦と変革の軌跡

はじめに

本日、株式会社シーテンは設立1周年を迎えました。

この1年を振り返ると、「激動」という言葉がこれほど相応しい時代があっただろうかと思います。当社が船出した2024年12月、生成AIは確かに注目されていましたが、まだ「便利なツール」の域を出ていませんでした。

しかし、この1年で起きた変化は、ソフトウェア業界の歴史に刻まれるものとなりました。

2025年:AIが「道具」から「同僚」になった年

年初 — コーディング支援の黎明期

起業したての頃、私はChatGPTやClaudeを「高性能なWeb検索の延長」として使っていました。コードのスニペットを聞く、エラーメッセージの意味を調べる、ドキュメントの要約をさせる。便利ではあるが、あくまで補助的な存在。

「AIがコードを書く」と言っても、せいぜい関数単位の話でした。

冬〜春 — 推論モデルの衝撃と「ジブリフィケーション」

シーテン設立とほぼ同時期の2024年12月、OpenAIは「12 Days of OpenAI」と題した連続発表を敢行しました。o1モデルの正式リリース、ChatGPT Proの投入、Soraの公開、そして最終日にはo3モデルの発表──まさに怒涛のリリースラッシュでした。

同じ12月、GoogleもGemini 2.0を発表。Project AstraProject MarinerといったリアルタイムAIエージェント構想も同時に公開され、AI覇権を巡る三つ巴の競争は、まさにシーテン誕生の瞬間から激化していたのです。

2025年に入ると、推論モデル(Reasoning Model)が本格的に実用段階に突入しました。1月末にはOpenAI o3-miniがリリースされ、単に「答えを出す」のではなく「考える過程を持つ」AIが誰でも使えるようになりました。複雑な問題を分解し、段階的に推論し、自ら検証する。従来のLLMが「博識な友人」だとすれば、推論モデルは「一緒に問題を解く同僚」でした。

そして2月、AnthropicがClaude Codeのリサーチプレビューを公開。CLIから直接Claudeと対話し、コードベース全体を文脈として渡し、複数ファイルにまたがる変更を一度に指示する──AI駆動開発の新時代の幕開けでした。同じ2月には、GitHub CopilotのAgent ModeがVS Code Insidersで初めてプレビュー公開され、AIが単なるコード補完から「自律的なペアプログラマー」へと進化する兆しが見えていました。

3月には、OpenAIがGPT-4oの画像生成機能をアップデートし、世界中で「ジブリフィケーション」が大ブームとなりました。写真をアップロードして「ジブリ風にして」と指示するだけで、スタジオジブリ作品のような温かみのあるイラストが生成される。CEOのサム・アルトマン自身もXのプロフィール画像をジブリ風に変更し、あまりの人気にGPUが悲鳴を上げ、無料版が一時制限されるほどでした。AIが「テキストを生成するもの」から「創造的なビジュアルパートナー」へと変貌する象徴的な出来事でした。

春〜夏 — AIエージェントとの格闘、そしてClaude Codeとの出会い

2025年4月、OpenAIはo3とo4-miniを正式リリース。推論モデルが初めてウェブ閲覧、画像生成、視覚理解を統合し、「考えるAI」が実世界で行動できるようになりました。

この頃、シーテンはAI駆動開発のコンサルティング案件を受注していました。設計フェーズではClaude 4、ChatGPT、Geminiを使い分け、コーディングにはVSCodeのGitHub Copilot Agent Modeを活用するという、まさにマルチAI体制での開発です。

しかし正直に言えば、この時期のGitHub Copilot Agent Modeはプレビュー版であり、苦労の連続でした。機能が安定せず、アップデートのたびに挙動が変わり、性能も期待には届かない。AIエージェントとの協働の可能性を感じつつも、その「未成熟さ」に日々格闘していたのが実情です。

そして5月、AnthropicがClaude 4(Opus 4 / Sonnet 4)を発表し、同時にClaude CodeがGA(一般提供)となりました。Claude Opus 4は「世界最高のコーディングモデル」として、7時間以上の自律的な作業が可能に。ローンチ当初のClaude CodeはCLIのみで正直使いづらかったものの、Claude Code for VSCodeとの統合版が登場してからは世界が変わりました。そのコーディング能力の高さ、コードベース全体を理解した上での的確な提案、複数ファイルにまたがる変更の正確さ──GitHub Copilot Agent Modeで苦労していた日々が嘘のような体験でした。

この時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。「これがAIエージェント開発の本当の姿なのか」と。

そして8月、OpenAIが満を持してGPT-5を発表。推論モデルと従来型モデルを統合した「ユニファイドモデル」という新しいアーキテクチャは、業界に大きなインパクトを与えました。

CursorやWindsurfといったAI統合IDEも注目を集めましたが、Claude Codeの圧倒的な能力の前に、多くの開発者がClaude Code一択へと流れていきました。私自身も、今ではコーディング作業のほぼすべてをClaude Code for VSCodeで行っています。

秋〜冬 — Gemini 3の衝撃とNano Bananaの革命

2025年秋、GoogleがGemini 3を発表しました。これは「Geminiショック」と呼ぶべき衝撃でした。

11月18日にリリースされたGemini 3 Proは、マルチモーダル理解とエージェンティックコーディングにおいて世界最高水準を叩き出し、主要ベンチマークでGPT-5.1やClaude Sonnet 4.5と真っ向勝負の結果を示しました。Deep Thinkモードによる高度な推論能力、そして新開発環境Google Antigravityの登場は、「Googleの逆襲」として業界を震撼させました。12月にはさらにGemini 3 Flashがリリースされ、高速かつ低コストでPro級の性能を実現しました。

実は、当社が現在開発中のWebアプリ「wagahi(吾輩は猫である)」でも、GeminiはAIキャラクターとの会話エンジンとして採用しています。Gemini APIの高い言語理解力は、キャラクターの個性を活かした自然な対話を実現する上で欠かせない存在となっており、今後のGemini 3系への移行にも大きな期待を寄せています。

そしてGemini 3の衝撃は、コーディングだけにとどまりませんでした。

画像生成の分野でも革命が起きていたのです。2025年8月、GoogleはNano Banana(Gemini 2.5 Flash Image)をリリースし、これがバイラルセンセーションを巻き起こしました。古い写真の復元からミニチュアフィギュアの生成まで、カジュアルなクリエイターの創造性を大いに刺激したのです。春のOpenAI「ジブリフィケーション」ブームに続く、画像生成AIの第二の波でした。

そして11月、Gemini 3 ProをベースにしたNano Banana Proが登場。これは驚異的でした。スタジオ品質の画像生成、複数言語での正確なテキストレンダリング、最大14枚の参照画像を使ったブランド一貫性の保持、そして4K解像度のサポート。単に「画像を生成する」のではなく、「プロフェッショナルなビジュアルアセットを制作する」AIへと進化していました。Nano Banana Proは「AIにここまでできるのか」と、コーディング以外の分野でも衝撃を受けた瞬間でした。

wagahiアプリでもNano Bananaの画像生成能力を活用しており、AIキャラクターのビジュアル生成やTCGカード風UIの素材制作に役立てています。ユーザーが撮影した写真からキャラクターを生成する機能は、まさにこの画像生成AIの進化があってこそ実現できたものです。

一方、Anthropicも負けていません。9月にはClaude Sonnet 4.5を「世界最高のコーディングモデル」としてリリース。11月にはClaude Opus 4.5が登場し、コーディング、エージェント、コンピュータ操作のすべてにおいて最高性能を更新しました。

AI三強──OpenAI、Google、Anthropic──の競争は、2025年後半に最も激しさを増したのです。

MCPとエコシステムの拡大

2024年末にAnthropicが発表したMCP(Model Context Protocol)は、2025年を通じて急速に普及しました。AIがファイルシステム、データベース、外部API、Git、さらにはブラウザまでも操作できるようになった。

これにより、AIは「テキストを生成するもの」から「実世界で行動するもの」へと変貌を遂げました。

数字で振り返る2025年のAI進化

時期 出来事 インパクト
2024年12月 シーテン設立 / Anthropic MCP発表 AIツール連携の基盤誕生
2024年12月 Google Gemini 2.0 / Project Astra・Mariner 発表 GoogleのAIエージェント構想が明らかに
2024年12月 OpenAI「12 Days of OpenAI」/ o3発表 推論モデル競争の幕開け
2025年1月 OpenAI o3-mini リリース 推論モデルが一般ユーザーへ
2025年2月 Claude Code プレビュー / GitHub Copilot Agent Mode プレビュー AIエージェント型開発の幕開け
2025年3月 GPT-4o画像生成「ジブリフィケーション」ブーム AI画像生成が社会現象に
2025年4月 OpenAI o3 / o4-mini 正式リリース 推論+ツール利用の統合
2025年5月 Claude 4 発表 / Claude Code GA 世界最高のコーディングモデル+CLI開発の革命
2025年8月 OpenAI GPT-5 発表 推論と従来型の統合「ユニファイドモデル」
2025年8月 Nano Banana リリース AI画像生成・編集のバイラルセンセーション
2025年9月 Claude Sonnet 4.5 リリース コーディング・エージェント性能の大幅強化
2025年11月 Google Gemini 3 発表 「Geminiショック」— Deep Think・Antigravity登場
2025年11月 Nano Banana Pro リリース スタジオ品質のAI画像制作が現実に
2025年11月 Claude Opus 4.5 リリース 現時点での最高峰モデル
2025年12月 Gemini 3 Flash リリース 高速×高性能の新標準

ソフトウェア業界は「大変な時代」に突入した

この1年で、私は確信しました。

ソフトウェア業界は、不可逆的な転換点を迎えた。

もはや「AIを使うかどうか」は選択肢ではありません。「AIをどう使いこなすか」が、エンジニアの、そして企業の競争力を決める時代になりました。

30年以上ソフトウェア開発に携わってきた私ですら、この1年で学んだことは、過去10年分に匹敵するかもしれません。ゲーム開発、土木設計システム、道路設計、そして宇宙関連システム──様々な領域を経験してきましたが、これほどまでに「ルールが変わった」と感じたのは初めてです。

激動の時代の「始まり」に立ち会えた幸運

振り返れば、シーテンを設立した2024年12月は、まさにこの激動の時代の「始まり」でした。

MCPが発表され、Gemini 2.0がリリースされ、「12 Days of OpenAI」でo3が発表され、推論モデルが台頭し、AIエージェントが実用化に向かう──その波の最初の一滴が落ちた瞬間に、当社は船出したのです。

起業のタイミングは、しばしば運に左右されます。しかし、この波を「乗りこなす」ことは、運ではなく意志です。

どんな困難にでも挑む勇気。

それが、シーテンの理念です。

2年目に向けて — 更なる高みへ

1年目は、波に乗ることに必死でした。

2年目は、波を起こす側になりたい。

生成AI・AIエージェントを活用した開発支援、AIドリブンな業務効率化のコンサルティング、そして次世代の開発者育成。シーテンが提供できる価値を、さらに磨き上げていきます。

チャップリンはこう言いました。

「人生に必要なのは、勇気と想像力、そして少しのお金だ」

勇気は、持っています。
想像力は、AIが拡張してくれます。
少しのお金は……まあ、なんとかなるでしょう(笑)。

おわりに

設立1周年という節目に、こうして振り返りの言葉を綴れることを、心から嬉しく思います。

この1年、お仕事をご一緒してくださった皆様、支えてくださった皆様、そしてこのブログを読んでくださっている皆様に、深く感謝申し上げます。

2年目のシーテンも、どうぞよろしくお願いいたします。

激動の時代を、共に駆け抜けましょう。


本記事は2025年12月時点の情報に基づいています。

著者: 株式会社シーテン — インフラ系から宇宙関連システムまで20年以上の開発経験を持つ技術者集団。2025年より生成AI・AIエージェントを活用したAI駆動開発に本格参入し、自社プロダクト「wagahi」の開発を通じて実践知見を蓄積中。

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