Windows 11 USB不具合をAIに相談した結果 — Geminiだけが正解を出した
はじめに
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「キーボードが効かない」
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開発者にとって、これほど致命的なトラブルはありません。2026年3月下旬、当社の開発環境であるWindows 11(バージョン25H2)搭載マシンで、USBキーボードが断続的に切断される不具合が発生しました。
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当社はAI駆動開発を日常的に行っており、複数のAIツールを使い分けています。このトラブルの解決にも当然AIを頼りました。しかし、結果は意外なものでした。Claude CodeとChatGPTは的確な解決策を出せず、Google Geminiだけが正解にたどり着いたのです。
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発生した問題
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症状
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| 症状 | 詳細 |
|---|---|
| 断続的な切断 | タイピング中に突然入力が停止し、数秒後に復帰 |
| デバイスエラー | デバイスマネージャーに「コード43(デバイス記述子要求の失敗)」が表示 |
| 切断音 | Windowsの「デバイス切断音→接続音」が頻繁に発生 |
| 発生タイミング | 高負荷時(ビルド実行中など)に集中 |
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環境
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Windows 11 バージョン25H2の最新パッチ適用済みで、2026年3月のKB5079473(月例セキュリティ更新)がインストールされている環境です。
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3つのAIに相談してみた
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Claude Code の回答
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Claude Codeに症状を説明したところ、以下のような提案がありました。
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- USBドライバーの再インストール
- デバイスマネージャーでのエラーデバイス削除と再スキャン
- Windows Updateの確認
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これらは一般的なトラブルシューティング手順としては正しいのですが、今回の問題の根本原因には到達しませんでした。
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ChatGPT の回答
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ChatGPTも同様に、ドライバーの再インストールやUSBポートの変更を提案しました。また、レジストリの i8042prt のStart値を変更する方法も提示されましたが、これはPS/2キーボード用のドライバー設定であり、USB接続のキーボードには効果がありません。
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Gemini の回答 — 正解
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Geminiに同じ症状を説明したところ、全く異なるアプローチが提示されました。
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「Windows 11 25H2の電源管理機能がUSBデバイスの電力供給を過度に制御しています。以下の3つを確認してください」
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1. 高速スタートアップの無効化
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2. USBセレクティブサスペンドの無効化
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3. 各USBルートハブの電源管理設定のオフ
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Geminiの回答が正解だった理由
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根本原因は電源管理だった
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この問題の本質は、ドライバーの不具合ではなく、OSの電源管理機能とUSBコントローラーの衝突でした。
\n\n高速スタートアップの問題: PCをシャットダウンする際、Windows 11はカーネルとドライバーのメモリ状態をディスクに保存し、次回起動時にそれをロードして高速化します。しかし、このプロセスでUSBドライバーの論理的な状態とUSBポートの物理的な初期化状態が不一致になることがあります。これが、起動後にキーボードが認識されない、または断続的に切断される原因でした。\n\nUSBセレクティブサスペンドの問題: アイドル状態のUSBデバイスへの電力供給を一時停止する省電力機能ですが、Windows 11 25H2ではこの機能がより厳格に動作するようになっていました。キーボードが一瞬でもアイドルと判定されると電力が遮断され、復帰時のハンドシェイクが失敗して切断音が鳴る、という症状を引き起こしていたのです。\n\n
解決の確認
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Geminiの指示通り、3つの電源管理設定を変更してPCを再起動したところ、問題は即座に解決しました。その後、再発は発生していません。
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なぜGeminiだけが正解できたのか
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Deep Researchの力 — 多段階調査が根本原因にたどり着いた
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今回の体験で最も大きかったのは、GeminiのDeep Research機能の存在です。
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Deep Researchとは、Geminiが単発のWeb検索ではなく、自ら多段階の調査計画を策定し、数百のWebサイトを自動巡回して情報を収集・統合するエージェント型リサーチ機能です。Google公式の説明によれば、「各ステップで、それまでに収集した全情報に立脚した上で、不足情報や矛盾点を特定して次の調査に進む」という動作をします。
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Claude CodeやChatGPTに同じ質問をした際、返ってきたのは「ドライバーの再インストール」「USBポートの変更」といった、いわばトラブルシューティングの定石でした。これらは一般的な知識からの回答であり、「Windows 11 25H2 + 2026年3月のパッチ + USB電源管理」という複数の要因が絡み合った構造的な問題にはたどり着けませんでした。
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一方、GeminiのDeep Researchは以下のような多段階の分析プロセスを経ていたと考えられます。
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| ステップ | Deep Researchの動作 |
|---|---|
| 1 | 「Windows 11 25H2 USB切断」でWeb上のコミュニティ報告を広範に収集 |
| 2 | 複数の報告に共通する「高速スタートアップ」「セレクティブサスペンド」というキーワードを抽出 |
| 3 | Microsoft公式のKnown Issues、ハードウェアベンダーの技術情報を横断的に確認 |
| 4 | 「電源管理の無効化で解決した」という報告の一貫性を検証 |
| 5 | 構造的な根本原因(OS電源管理とハードウェアの衝突)を特定し、対策を提示 |
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この「トータルの問題分析と解決」こそが、Deep Researchの真骨頂です。表面的な症状への対処(ドライバー再インストール)ではなく、問題の構造を多角的に分析して根本原因に到達する能力が、今回の差を生みました。
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Google自身もGeminiを根本原因分析に活用
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興味深いことに、Google Cloud自身もGeminiベースの根本原因分析(Root Cause Analysis)機能を提供しています。「ログ、アセット、メトリクスを並列に深層分析し、ドメイン固有の知識を用いて根本原因を特定する」という仕組みであり、まさに今回のUSB問題でGeminiが見せた能力と同じアプローチです。
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学習データの違いも一因
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加えて、GoogleはChromeOS、Android、Workspaceを通じてOS・デバイス管理に関する膨大なデータを保有しています。Windows環境のトラブルシューティングに関するコミュニティの知見も豊富に学習している可能性があり、ハードウェアとOSの相互作用に関する問題に強い基盤を持っていると推測されます。
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教訓: AIにも「得意分野」がある
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当社はClaude Code、ChatGPT、Geminiを用途に応じて使い分けています。今回の経験で改めて感じたのは、AIモデルごとに得意分野が異なるということです。
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| AI | 得意な領域(当社の体感) |
|---|---|
| Claude Code | コーディング、設計、文書作成 |
| ChatGPT | 汎用的な質問応答、ブレインストーミング |
| Gemini | Deep Researchによる多段階調査、ハードウェア・OS関連の根本原因分析 |
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もちろん、これは一事例からの結論であり、常にこの通りとは限りません。しかし、一つのAIの回答に満足せず、複数のAIに同じ質問を投げることの重要性を実感しました。特にハードウェアやOS絡みの複雑な問題では、Deep Researchのような多段階調査機能を持つAIに聞いてみる価値があります。
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2026年3月のWindows 11の混乱
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補足として、今回のUSB問題は単発の不具合ではありませんでした。2026年3月のWindows 11は異例の混乱に見舞われていました。
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| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 3/10 | KB5079473リリース → Microsoftアカウントのサインイン認証が破損 |
| 3/21 | 緊急パッチKB5085516リリース → 認証問題は修正されるが他の不具合残存 |
| 3/26 | KB5079391が配信開始 → 直後にインストール失敗が多発し配信停止(プル) |
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OSのコアコンポーネントが不安定な状態にあった3月に、USB電源管理の問題が顕在化したのは偶然ではないかもしれません。
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おわりに
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「キーボードが効かない」という、一見するとAIとは無関係なトラブルが、結果的に「AIの得意分野の違い」を浮き彫りにする体験になりました。
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AI駆動開発を行う当社にとって、AIは万能ではないということを日々実感しています。だからこそ、複数のAIツールを使い分け、それぞれの強みを活かすアプローチが重要です。
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次にPCのトラブルが起きたら、まずGeminiに聞いてみようと思います。
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