あなたの街のキャラクターが、もっと「地元らしく」なった理由 — 1,851件のデータ品質を作り込んだ話
「同じ話ばかりする」問題、その後
以前当社ブログでご紹介した「AIキャラクターの画一化問題」(Ver2.3.0要件1)は、プロンプト設計の見直しで一定の改善を達成しました。しかし、根本的な課題がもう一つ残っていました。それが地域データそのものの粒度と品質です。今回は、この課題にどう向き合ったかをお伝えします。
1,851件のデータ、しかし中身は「テンプレート」だった
wagahiのキャラクターは、撮影された場所の市区町村プロフィールデータを参照して会話を生成します。Ver2.3.0の要件5として、全国1,851件の市区町村プロフィールデータを投入していたのですが、当初のデータは正規表現とテンプレートを組み合わせたルールベース自動生成によるもので、品質に課題を抱えていました。
県庁所在地(お手本データ)と自動生成データを比較すると、その差は歴然でした。
- world_view(世界観描写): お手本は固有表現、自動生成は「〇〇に育まれた歴史と自然の地」といったテンプレート表現
- cultural_keywords(文化的キーワード): 自動生成データのうちNULLが380件
- historical_context(歴史的背景): 自動生成データのうちNULLが7件
ルールベース抽出は正規表現による機械的な処理のため、テキストの意味を理解できません。結果として、同一都道府県内の異なる市区町村で似たようなトーンの会話が生成されてしまい、地域データの解像度を上げたはずなのに、画一化問題の解消には十分な効果を発揮できていなかったのです。
Claude Codeが1,851件を直接要約
この課題に対して当社が採った方式は、外部API(Gemini等)を使わず、Claude Codeが各市区町村のWikipedia生テキストを直接読み込み、品質基準に沿って4カラムを再生成するという、地道ながら確実な方法でした。
品質基準として、historical_contextは150〜300文字で固有の歴史・地理・産業・文化を含み具体的な人物・年代を複数含むこと、cultural_keywordsは固有の観光名所・特産品・祭り・有名人・地名をJSON配列5個で構成すること、world_viewは100〜170文字の情緒的・詩的描写でテンプレート表現を禁止すること、といった明確な基準を設けて全件を検証しました。
ユーザーの目に見える変化
この地道な品質拡充作業の成果は、4月上旬に段階的にリリースされました。
- 都道府県から市区町村へ: これまでは都道府県単位だった地域の個性が、全国約1,850の市区町村ごとの特徴として反映されるように
- 同じ県内でも違う顔: 同じ長野県でも、長野市と松本市ではキャラクターの話し方や知っている地元の話題が変わり、長野市のキャラクターが信州弁で語りかけてくれることも
- 会話エンジン自体も改善: 北海道生まれのキャラクターは「だべさ」、沖縄生まれのキャラクターは「さぁ」など、方言表現がより豊かに。会話が途中で同じ言葉を繰り返す不具合も解消
- データが薄い地域も安心: まだ情報が少ない市区町村でも、都道府県レベルの特徴で自動的に補われる設計にしているため、どの街で撮影してもキャラクターが地域の雰囲気を持って生まれてくる
開発者としての振り返り
今回の取り組みで実感したのは、生成AIキャラクターの「個性」は、プロンプト設計だけでは完成しないということです。プロンプトがどれだけ工夫されていても、参照するデータそのものがテンプレート的であれば、出力も画一的になります。地味な作業ではありましたが、1,851件のデータを一件ずつ品質基準に照らして作り込んだことが、最終的なユーザー体験の差につながったと考えています。
本記事は2026年4月時点の情報に基づいています。
著者: 株式会社シーテン — インフラ系から宇宙関連システムまで20年以上の開発経験を持つ技術者集団。2025年より生成AI・AIエージェントを活用したAI駆動開発に本格参入し、自社プロダクト「wagahi」の開発を通じて実践知見を蓄積中。
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